生活があるので・・

 かつて教育の現場で「日の丸」「君が代」高揚キャンペーンが繰り広げられた時期がありました(ある意味今も続いていますが)。親しかったある学校教師の方とそのことについてしばらく話していました。こうした動きの背景にある国家主義的な空気のあやうさについて言葉を交わしていたのですが、先生はこうした問題意識自体に反対はされませんでしたが、最後にご自分の事情をお考えになったのだと思われる発言をされました。「自分は公務員です。生活があるので・・・」。

 筆者も先生の立場はわかります。そのような発言を責めることはできないでしょう。けれども、「生活があるので」との言葉はその後もおりあるごとに思い出されるのです。

 国を代表する大臣から、役人、企業社員、マスコミ関係者にいたるまで、今日「生活があるので・・・」として自分の身の安全、安泰を最優先し、語るべきことを語らない、口を閉ざす風潮が蔓延していると感じます。このような沈黙が、取り返しのつかない方向へ社会を押し流すことを知ってか知らでか、ひたすら流れを眺め、流れに乗ることのみを願っているようです。

 歴史を学ばない、歴史を教えない風土がこのような状況をもたらしているのでしょうか。明日の日本が案ぜられます。