振るわれないもの

 地球の地殻の大変動期に入っていると言われます。世界の各地で火山の噴火や大地震が多発しています。先週も草津白根山で予期せぬ火山の爆発がありました。こうした状況を見ると、首都直下型の大地震、東海、南海大地震の発生も予想されます。心したいと思わされます。

 大災害のことを思う時、戦後まもなく長野県飯田市で発生した大火で実家を失った経験を持つ、筆者の中学校時代の恩師の言葉を思い出します。勉学で郷里を離れていた彼は、大火の知らせに飯田に急遽もどりました。おり立った町は、焼け野原となり先生のおうちは灰となっていました。「そのことがあって以来、『もの』への執着がなくなりました」と話されたその言葉を忘れることはできません。

 災害への備えと共に、避けられないその災害の中で直面するであろう「喪失」のことも心に留めつつ、いかなる物事の中にも失われないもの、振るわれないものとはなにかということにも思いをはせつつ生かされたいと思うことです。