木々の変容

 里の林も紅葉の山場を迎え、分け入る者の目を楽しませてくれます。景観の変化は急ぎ足で、歩くたびに印象が変わっていきます。この季節のだいご味です。

 夏の間、緑一色の林、単調で目はあまりそちらに向くことはありません。道端の小さい花たちや種々のチョウが観察の対象です。ところが今は、紅葉が日々に進み~紅葉というものの、バリエーションに富んだ黄色が主役ですが~目は自然、林のほうに奪われます。これまで緑に埋もれて目立たなかった木々が、一本一本、思わず感嘆してしまうような美しさで、その存在を際立たせています。昔の人は、このような林のにぎわいを「錦」にたとえましたが、まったくその名に恥じない眺めです。

 人間の経済活動によって環境が悪化しつつあり、自然界も痛ましいともいえる変容を見せていますが、それでも、今年の秋もこのような林のたたずまいを楽しませてもらい、ありがたいような気持です。いつまでもこうであってほしいと願いつつ。