地方の苦悩

所用で千葉県内の、ある浜の町を訪れました。長い砂浜で知られたその町は、しかしながら大部分農地で、早い田植えも終わっていて、落ち着いた農村のたたずまいを見せています。緑も豊かで、山もない平坦な地域ではありますが、小鳥のさえずりがあちこちから聞こえ、そこにいるだけで癒された気分にさせてくれます。

 しかし、町を知る知人の話を聞いて、「ああ、やっぱり」という思いを禁じることができませんでした。かつて、イワシ漁が盛んだったころ、この町も地域では最も力のある、豊かな地域であったとのことです。資産家たちは都の文人たちのパトロンとなり、今でもそのころを遺すものがあちこちにあるとのことです。

 しかし、町は昭和30年頃より、漁獲量が減り、勢いは衰えてきたというのです。もともと農業は、自家用米の作付程度であり、産業と言うにはほど遠いものでした。今では、サーフィンや、季節の浜遊びなどの観光のほか、これといったものはなく、豊かな自然とはうらはらに、「過疎」ともいうべき状況とのこと。なんとも寂しい限りです。

 考えてみると、ここの現状はここだけでなく、「地方」と呼ばれる全国の大部分の地域がまったなしで向かい合っている状況なのでしょう。なぜここまでになってしまっているのか。

 一概に論ずることはできませんが、いずれこのようになることは大分以前から

                                   分かり切っていたのに、有効な対策がなされてこなかったのではないかと言う

                                   ほかありません。国も民も、抜本的な対応を先送りし、その場しのぎの補助金

                                   行政でお茶を濁してきたのではないか。自分も含め、わが国の発想の貧困を

                                   嘆くほかありません。

                                    しかし、この国土を放置するわけにはいかないはずで、今からでも、国を挙

                                   げて取り組まなければならないでしょう。