老兄のこと


                老兄のこと

「枯れ木も山のにぎわいだで(だから)」出席した礼拝のあと、はげ頭をかきながら話してくれたその笑顔は、いつもまでもわたしの記憶に鮮やかです。

 初任地である、長野県のある町の教会での出会いです。そのかたは、戦時中のいろいろな

事情で教会を長く離れている方でした。昔からその方を知る先輩牧師が、赴任したてのわたしをその方のところに連れて行って、紹介してくれました。

 わたしが時々おたずねすると、とてもよろこんでくださり、昔のことをいろいろ話してくださるようになりました。あるときは、最近の訳の聖書を、小遣いをはたいて求め、お届けすると大変喜んでくださったようでした。

 あるとき、突然わたしの仕える小さな教会の礼拝に出席されました。以後、日曜ごとに見るようになったのです。そして「枯れ木も・・」とおっしゃったのですが、駆け出しの伝道者にとって、これほどうれしい応援はありませんでした。