人は何のために生きるか

              人は何のために生きるか

 所用で出かけた折、電車でトルストイの民話集「人は何のために生きるか」を読みました。ここには、心に響くいくつかの小品が収められています。よく知られた「くつやのマルチン」もその中にはあります。

 福音書を愛読したトルストイは、イエスの愛の教えと生涯を、人の生き方の根本として示します。作品の中には、貧しさの中で、生きるために苦労する人々を覆う情け容赦ない現実が描かれるとともに、そこでこそ人を生かす隣人愛の意味と尊さが繰り返し物語られています。

 なぜ人は、先を見通すことができないのか、思い通りにいかないのか、それは、だからこそ人と人が助け合い、愛し合うためなのだ、と語りかける彼の言葉は、今日も少しも色あせず、読む者を考えさせます。