使い分け

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 安部総理大臣は最近出席した国際会議で演説し、「法の支配」の重要性を説いたと伝えられました。同様な場で同氏はしばしば、「自由と民主主義の価値観を共有する」国々、と呼びかけることも知られています。

 ところで、同氏は昨年来、大方の国民の思いに反して、軍事力による平和維持を正面に掲げ、集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定をする一方、その法制化に向けてあらゆる取り組みを進めています。その先には憲法改正も目指されています。

 このような方向については、先の大戦の惨禍で戦争の悲惨と限界を経験した国民として多くの人々が違和感をいだき、戦前回帰を危惧しています。特に、集団的自衛権の議論では、憲法学者の大半、その他多数の有識者、政治経験者が従来の憲法解釈を大きく逸脱するもの、憲法に違反するものであることを明言しています。

 「自由と民主主義」はもとより、「法の支配」を他国に向かって説く者であるなら、こうした多数の正論を尊重し、傾聴すべきものでありましょう。ところが、内閣は耳を貸さないどころか、「憲法には違反しない」と強弁し、正面突破を画策しています。「法の支配」が聞いて呆れましょう。これでは一内閣による「法の支配」であり、想定される最悪の状況と言わざるを得ないでしょう。気取って、「法の支配」などと口にすべきではありません。使い分けはいけません。