手ごわい本

 身辺の変化で、少し気持ちに余裕ができたのか、雑用に追われながらも本を読むこころがけができてきました。そんな中、これまで敬遠して素通りしてきたような「古典」や「堅い」本にも挑戦するようになりました(やや遅きに失した感はありますが)。やはり、自分の眼で読むことの大切さをつくづく感じます。

 ところで、専門の分野はともかく、素養のない分野のもの、自分が苦手としてきた分野のものなどの中には、難解でほとんど理解できない内容のものもあります。そんな時には、ほとんど意地で活字と格闘するような格好になります。若い時ならすぐ投げ出したと思いますが、今はとにかく最後のページまで目を通すようにしています。最近の例では「数の不思議」(草場公邦 講談社)、「判断力批判」(カント 岩波書店)、「諸国民の富」(アダム・スミス 岩波書店)なんかがそうでした(その筋の人からは笑われそうですが)。それでも、投げ出さないで読んでいくと、著者の伝えようとする世界が見えてきます。今まで人づてに書名だけは聞いていたものが、ずいぶん身近に感じられるようになるから面白いです。何らかの収穫、いやいやなかなかの収穫があります。

 アナログ人間の筆者は、今のところ電子書籍ではなく、本棚に眠っていた活字の本たちに手を伸ばすのです。彼らは逃げずに待っていてくれます。