仏典を読む

 岩波文庫で「般若心経・金剛般若経」(中村 元訳)を読みました。大乗仏典として日本ではなじみ深い経典です。短い中に「空」について説いています。「悟れ、しかし悟ったと思うな。なぜなら悟りなどないのだ」と繰り返し説きます。読み終えて、単純ながらとても洞察に富んだ教えだと思いました。

 しかし、深い真理を伝えながら、どこまでも虚無の香りが消えないのは何だろうと思いました。逆説的にしか法を説くことができないのだろうかと感じました。その宇宙観の壮大さにおいて、キリスト教に匹敵しつつ、根本において何が異なるのだろうか。

 わたしは、この教えにおいては絶対的人格神がいない、というより否定されているところが最も異なるのではないかと思います。一方、聖書の教えの根底にあるのは「天の父」と呼ばれる創造者なる神です。イエス・キリストを通して、この生ける神に向かい合って生かされること、「天の父よ!」とよびかけることのできる幸いをあらためて感じます。