靖国にこだわる人たち

 靖国神社は明治2年、幕末の志士や国事に殉じた軍人などの戦没者を「英霊」として祀るために創建されました。当初より国民の戦意高揚を図る宗教施設で、日本帝国主義の象徴であり続けた神社です。ちなみにその英訳表記はYasukuni War Shrineです。その色彩は今日も変わりありません(大前建一「安部首相の靖国参拝、知られざる波紋」参照)。

 安部総理、高市総務相らは、以前から参拝に心を注いできました。その言うように、本当に世界平和、日本の安寧を祈るためならば、国内外すべての戦没者を記念する千鳥ヶ淵戦没者墓苑にて記念すべきものでしょう。けれども「靖国」にこだわります。根っから「英霊」の尊崇を教え込まれて来た人たちなのでしょう。

 阿部氏らの心中には、帝国主義の犠牲となった一般国民、心ならずも戦地に赴かされた若者たち、アジア諸国の人々、思想信条にかかわらず神社の都合で合祀された人たちとその遺族の人々の痛みが少しでもあるのでしょうか。

 国家公務員の長たる総理や閣僚が、現憲法の規定する政教分離の原則を自ら無視し、蹂躙することは、到底国内外の理解を得られるものではないでしょう。