思い出のぬいぐるみ

                  深まる緑
                  深まる緑

 筆者の母親は大正初めの生まれでした。学業を終えると、青森県から上京、就職しました。病気でつまづき、失意の中、キリスト教と出合いました。初めて知る救いの喜びに、ついに信徒の立場で伝道に献身。やがて、伝道者である父と結婚しました。戦災で横浜を焼け出され、戦後は信州で開拓伝道(基盤のない所に布教し、教会を立ち上げる働き)に従事しました。経済的な困窮の中から、幼時保育に携わりました。保育者として夫を支え、五人の子供を育てました。貧しさの中、勤務に教会の働きにと人生の日々を過ごしました。

 筆者の幼い頃、よく、家事が終わるとコタツに座って、端切れ布を利用して犬やリス、亀などのぬいぐるみを作ってくれました。ろくにおもちゃも買えない生活の中、子どもの情操を考えてくれたのでしょう。出来上がるのがとても楽しみだったのを覚えています。

 もう35年も前、65歳で亡くなりました。筆者は28歳となっていましたが、心配をかけっぱなし、親不孝しっぱなしで終わってしまいました。申し訳ないと思うばかりですが、ありし日を忍ぶ時、ただ、ただ感謝です。