大池公園のわらび
       大池公園のわらび

 植物を育てる上でとても大事なのが土です。これは、肥料以前の問題と言えましょう。鉢に植えるとき、その植物にあった土であれば、元気に生育します。けれども、土が適合していないと、元気がないばかりでなく、成長は止まり、ひどい場合枯れてしまいます。植物にとって土は死活問題なのです。

 けれでも、都市部で生活していると、広い土地でも持っていない限り、良い土をなかなか手に入れられません。店では、種類別に袋に詰められた土が販売されていますが、これぞという土はなかなかありません。天然の土にまさるものはないと思います。もっとも、天然の土もいろいろで、それなりに手を加えてやる必要はありますが。しかし、天然の土のもつ「土壌力」は、店先の土ではなかなか得られないと思います。土というものの大切さ、尊さを考えさせられます。

 もともと農村で暮らしていた筆者は、農家の人たちが、作物を栽培するのに、どれだけ土作りに力を注ぐかを少し知っています。さらに、近代の効率を追求する、農薬や化学肥料をふんだんに使用した農法が、結果的には土の力を奪っていくことに気づいた農業者が、土の再生のためにどれだけ心を砕き、手をかけているかを見聞きして来ました。良い土から、よいものが生育するのです。

 これは、人づくりについても言えることではないかと思います。今日、青少年の育成について、学力の向上はもとより、人格形成も含め、重い課題が提起され、教育の現場はじめ諸方面で様々な取り組みや議論が展開されています。どれも大切なことですが、インスタントな成果のみを期待するのでなく、彼らが健全に成長できる土壌をいかにしてつくっていくかを考えなければならないと思います。

 ともあれ、良い土を手に入れることは、決してやさしいことではありません。