便利さの代償

       あざみにとまったチョウ
       あざみにとまったチョウ

 知り合いの方からはがきをいただきました。しばらく前に持った交流のひと時への感謝のご挨拶でした。手書きで、お心のこもったことばがしたためられており、美しい花があしらわれた郵便切手が貼られています。このようなお便りをいただくことは最近本当に少なくなりました。ほとんどの用件は、パソコンのメールで配信されてきます。郵便が届いても、ワープロ書きであったりすることがほとんどです。あらためて、手書きの便りのあたたかさ、とうとさを感じさせられました。

 すべてがめまぐるしくなった今日。新しい技術の開発で、生活を便利に、効率的にする製品や、システムがつぎつぎと出回り、世の中はめまぐるしく進歩していきます。けれども、時々ふと考えさせられます。一つ便利になるごとに、一つ効率的になるごとに、実は何かとても大切なものが失われているのではないかと。

 時代の要請で、通信、交通、生産活動、娯楽、家庭生活などのあらゆる分野で、利便性、効率性はこれからもますます追求されてゆくことでしょう。わたしたちもその驚くような恩恵にあずかってゆくことでしょう。でも、その「便利さ」の代償として大切な何かが失われているかもしれないということを忘れないでいたいと思います。効率的でないと捨てられた「不便さ」、「たいへんさ」のなかに、かけがえのないものがしばしばあることを考えたいと思います。時には、効率性ということだけで捨ててはいけないものもあることを、心にとめておきたいものです。